「由井くん、そろそろ次行こう」
「え、また?」
クラゲの水槽からふいっと背を向けると、由井くんが怪訝な声でつぶやく。
薄暗かったクラゲの展示コーナーよりも明るい場所に出ると、由井くんがいつもどおりの様子でそばにいて。なんだか、すごくほっとした。
「衣奈ちゃんって、ちょっと飽き性?」
由井くんが、さっきからすぐに次の水槽へと移動しようとするわたしの顔を覗き込んでいたずらっぽく笑う。
「そういうわけじゃないけど……」
由井くんが水槽の水の中に消えそうに見えたなんて言えない……。
顔を近付けてくる由井くんから顔をそらすと、彼が「あ」となにか思いついたようにまばたきした。
「衣奈ちゃん、おなかすいたんでしょ。おれのことは気にせず、好きなときになにか食べてね」
にこっと笑いかけてくる由井くんの言葉は鈍くて的外れ。
だから、変な不安をいだいた自分がバカみたいに思えて、ちょっと笑ってしまった。



