日曜日の朝。ダイニングでトーストにバターを塗っていると、クレイが「シャーッ」と牙を剥いてきた。

 クレイが今日も警戒しているのは、わたしの後ろにいる由井くんだ。

 由井くんに憑かれたばかりの頃は、顔を合わせる度に毛を逆立てて怒るクレイの姿に落ち込んだけど、毎日のように牙を向けられているうちに、こっちが日常のように感じ始めているから怖い……。

 家族のみんなも、ちょっと前までは、わたしに牙を剥くクレイを見て首をかしげていたのに、最近はもうなにも言わない。

 由井くんを睨んで毛を逆立てるクレイを横目に見ながら、トーストをかじる。

 わたしがゆっくりと朝食を食べていると、いつもはクレイに近付きたくない由井くんから「早く食べて……!」と急かされるのだけど……。

 今日の由井くんは、おとなしい。

 今日だけじゃなく、昨日も一昨日も。

 由井くんはクレイに「シャーッ」と唸られても、聞こえていないみたいにぼんやりとしている。

 何日か前にうちに来たアキちゃんから、自分が自殺しようとしていたのかもしれないという話を聞いて以来、由井くんはずっと落ち込んでいるみたいなのだ。