「衣奈ちゃん、おれ、どうして自分がなにも思い出せないのか、元の体に戻れないのか、ちょっとわかったかもしれない……」
「え?」
「この前、おれの兄だっていう人に会ったとき、あの人言ってたでしょ。元々のおれは、髪型とか服装には無頓着なタイプだった、って。こんなふうになる前のおれはきっと、ダサくて暗くて、中条ってやつらにいじめられてて、死にたがってたんだよ」
「そんなこと――」
「どんな話を聞いても誰と会っても自分のことをなにも思い出せないのは、病院にいるほんとうのおれが目を覚ましたいなんて思ってないからだ。だからおれと衣奈ちゃんは、どうやったら元の身体に戻れるかじゃなくて、どうやってユーレイ状態になってるこの身体を消滅させられるかを考えたほうがいいかもしれない……」
落ち込んだ顔でネガティヴな発言ばかりする由井くんからは、どんよりとした暗いオーラが漂ってくる。



