「ねえ、今思い出したんだけど……」
「え、なに?」
期待を込めて由井くんのほうに身を乗り出すと、彼がいたずらっぽく目を細めた。
「おとぎ話だよ」
「おとぎ話?」
「うん、白雪姫とかいばら姫の話」
「……、う、ん?」
そんなプリンセスのおとぎ話が、由井くんとどう関係があるんだろう……。
怪訝に眉を寄せたわたしに、由井くんがふわっと近付いてくる。
「白雪姫やいばら姫は、愛する人のキスで目覚めるんだよね。だからおれも、衣奈ちゃんにチューされたら目覚めるかも」
間近に顔を寄せてきた由井くんが、唇に綺麗な弧を描く。
ち、ちゅーって、どういうこと……?
わたしが、眠っている由井くん本体に……?
それとも、目の前のユーレイ状態の由井くんに……?
そんな考えが頭に浮かんで、ぼうっと顔が燃え上がりそうなほどに熱くなる。
「な、キスで目覚めるとか……、そんな夢みたいなことあるわけないじゃない……!」
一瞬でも由井くんとキスする想像をしてしまった自分が恥ずかしくて、病院にいることも忘れて大きな声を出してしまう。



