「うーん、何がだめなんだろうね……」
「わかんないけど……。おれがこの身体が自分だって思えない限り、だめな気がする」
「自分だって思えないの? わたしからしてみれば、ここで寝てるのはどっからどう見ても由井くんだけどな……」
「うん、なんていうか……。問題の答えは合ってるんだってことはわかるんだけど、そこにたどり着くための理解が追いつかない感じ。ここで寝てるのがおれって言われたらそんな気もするけど、気持ちがふわふわしてて、まったく実感がない」
「それは、由井くんがわたし以外の記憶をなくしちゃってるせいなのかな……?」
「わからない……」
由井くんの名前や学年、わたしとの関係、居場所までわかって。さらには、お兄さんと話ができて……。
由井くんに関する情報はいくつも集まっているはずなのに、由井くんが記憶喪失なままなのはどうしてだろう。
もしかして、由井くんが無意識のうちに思い出すことを拒否してる……?
「とりあえず、しばらくの間病室に通ってみようか。毎日通っていれば、何か思い出すこともあるかもしれない」
少し考えてから提案すると、由井くんが「そうだね」と頷く。それから、ふとなにか思い出したようにまばたきをした。



