「だって、あんなふうにパニックになってる状態の由井くんを置いてけないよ。わたし、そこまで非道じゃない」
「そんなこと言って……。だから衣奈ちゃん、おれみたいなのにつきまとわれちゃうんだよ……」
由井くんがふいっと横を向いて、ボソボソと何か言っている。その横顔を見つめながら思った。
「だけどひとまずは、由井くんが生きてるかもってことがわかってよかったよね」
何ヶ月か前に、電車に飛び込みそうになっているところを助けたのに。もしその人が、事故で命を奪われていたとしたらやりきれない。
ポツリとつぶやくと、由井くんがわずかに目を見開く。
事故に遭って入院しているという彼が今どういう状態にあるのかはわからないし、なぜ彼がユーレイのような状況になっているのかもわからないけど。
意識不明の状態で眠っているってことは、彼の身体はまだ生きている可能性が高いってことだ。
なんらかの理由で彼の意識だけが身体から抜けてきてしまったのだとしたら、きっと元に戻ることもできるはず……。
だけど問題は、由井くんがまだわたしを「好きだ」ってこと以外、なにも思い出せていないってことだ。



