《大野くんに、由井 周って人のことをできる限り聞いてみてほしい》
由井くんの名前がわかったわたしは、家に帰ってからすぐにアキちゃんにラインを送った。
部活が終わってからラインに気付いてくれたアキちゃんからは、既読が付いたあとに電話がかかってきて。
「なあ、ほんとうに大丈夫なの? なんか変なことに巻き込まれてない?」
心配そうな声で、何度も確認された。
「大丈夫。アキちゃんが心配することはなにもないよ。もしなにか困ったことがあったら、ちゃんと相談するから」
わたしがそう言うと、アキちゃんも最後には渋々といった感じで納得して、大野くんに連絡してくれた。
その結果、わかったのは……。
まず、由井くんが高校二年生だということ。
それから、彼の実家はうちから電車で一時間ほどのところにある由井原総合病院であるということ。
お父さんが由井原総合病院の院長と勤めていて、医学部に入った優秀なお兄さんがいるということだ。
どうやら由井くんは、なかなか裕福なお家のおぼっちゃまだったらしい。
由井くん自身は、頭はいいけれど地味であまり目立たない生徒だったみたいだ。