「いいなあ、指輪。わたしの場合、羨ましがる前にくれる相手がいないけど」
「衣奈も誰か好きな人作りなよー」
友人の右手に光る指輪を見つめながら自嘲気味に笑うと、瑞穂が他人事みたいに軽い口調でそう言った。
わたしには好きな人がいないわけではないのだ。ただ、思ったところでどうにもならないだけ。
瑞穂と話しながら歩いていると、アキちゃんと里桜先輩がわたし達のそばを通り過ぎていく。
里桜先輩と顔を寄せ合うようにして歩くアキちゃんは、彼女以外何も見えていないみたいで。わたしには目もくれない。
幸せそうなアキちゃんの横顔をさりげなく目で追いながら、心の中でため息を吐く。
アキちゃんへの気持ちは、瑞穂には打ち明けていなかった。
友達から「彼女ができた幼なじみのことが好きだと気付いた」と打ち明けられたって、瑞穂もどう慰めればいいのか困るだろう。
「好きな人作るとか、そんな簡単にムリだよ」
苦笑いを浮かべながら言うと、瑞穂が「でもさー」と横からわたしの顔を覗き込んできた。
「衣奈って、わりとモテるじゃん」
瑞穂にじっと見つめられて、「えー、まさか」とプルプル首を横に振る。



