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瑞穂や先生に協力して保健室まで運んでもらったアキちゃんは、昼休みが終わってしばらくしてから無事に目を覚ました。
六時間目の授業が始まる前に教室の戻ってきたアキちゃんは、由井くんに操られていたときのことをすっかり忘れていて。
「俺、中庭で話してるときに急に貧血で倒れたんだってな。迷惑かけてごめん」
と、笑いながら謝られた。
普段から健康であまり病気をすることのないアキちゃんは、「でも、なんで急に貧血とかなったんだろう。昼メシもちゃんと食ったんだけどな」と少し不思議がっていて。
事情を知っていて苦笑いを浮かべるわたしのそばで、由井くんが青白い顔で縮こまっていた。
中庭で気を失ったアキちゃんが、けっこう長いこと眠ったままでいたので、由井くんは自分のしたことをめちゃくちゃ反省したらしい。
午後の授業のあいだ、そばにいる由井くんからはずっと暗くて冷たい落ち込んだオーラが出ていて。授業中、ちょっと寒かった。
由井くんの不思議な霊力みたいなものには驚かされたけど、アキちゃんがなんともなくてよかった。
それに、アキちゃんが何も覚えてなかったのもよかったと思う。
もしアキちゃんのなかに、わたしとキスしようとした記憶がうっすらとでも残っていたら。恥ずかしすぎて、もう二度と顔を合わせられない。



