由井くんは、何してるんだろう。
不思議に思って見ていると、由井くんがアキちゃんの目の前からパッと手を離す。その瞬間、アキちゃんの瞳が暗く翳った。
さっきまでしっかりと目を合わせていたはずなのに、アキちゃんがどこか焦点の合わない目でわたしのことをぼんやりと見てくる。
「え、アキちゃん……?」
急に、どうしちゃったの?
ミルクティーの缶を置いて、わたしも立ち上がる。
「アキちゃん、どうしたの?」
心配になってアキちゃんの顔を覗き込むと、彼の後ろにゆらりと立った由井くんが、唇の端をピクリと痙攣らせた。
「衣奈ちゃん。カノジョから奪うなら、今がチャンスだよ」
「奪う?」
「だって衣奈ちゃん、好きなんでしょ。こいつのこと」
うっすらと微笑む由井くんの目は、少しも笑っていなくて怖かった。
焦点の合わない目で、わたしを通り越してどこか遠くを見ているようなアキちゃんも、その後ろで妖しく微笑む由井くんも、どちらも異様な雰囲気を醸し出していて怖い。
「ねえ、ふたりとも、どうしちゃったの……?」
顔を引き攣らせながら一歩、二歩と後ずさると、アキちゃんと由井くんも、同じだけ距離を詰めてくる。
ほんとうに、どうしちゃったんだろう。
さっき、由井くんがアキちゃんに目隠しのようなことをしてたけど……。そのあとから、様子が変だ。



