「とりあえず、俺の話はそれだけ。由井って人のことは、大野もなにも知らなそうだったし力になれることはないけど……。もし困ったことがあったら、いつでも言えよ」
いつでも言えって言われてもな……。
アキちゃんは里桜先輩と付き合い出してからも、変わらずわたしに優しく接してくれる。
それはすごく嬉しいけど、由井くんに憑かれている今の状況は話せないし……。
由井くんのこと以外でなにか困ったことが起きたとしても、カノジョのいるアキちゃんに、ヘタなことでは頼れない。
それでもいちおう「ありがとう」を伝えると、アキちゃんがわたしの頭をぽんっと撫でてきた。
気安く触れてくるアキちゃんの手を複雑な気持ちで受け止めていると、わたしの隣で静かに座っていた由井くんが、不意にゆらりと立ち上がる。
急にどうしたのかと思ったら……。
「そんなに心配なら、口先だけじゃなくて、お前が衣奈ちゃんのそばにいろよ」
ぼそっとつぶやく声がして、由井くんがアキちゃんの後ろにフラリと回り込む。それから、後ろからアキちゃんの顔の前にスーッと腕を回すと、青白い両手をアキちゃんの目の前にあてた。
わたしから見たら、アキちゃんは由井くんに後ろから目隠しされているような状態になっているのだけど。由井くんの姿が見えないアキちゃんは、もちろんそのことには気付かない。



