「衣奈が会いに行ったのは、ほんとうは由井っていう男だろ。ほら、この前俺に話してたじゃん。大野に、由井って人のことを聞いてみてほしいって」
「え、あ〜。うん……」
「そのときに、青南学院で最近事故や事件に巻き込まれた生徒がいなかったかも聞いてほしいって言ってただろ。だから大野から、衣奈が土曜日に青南学院に来てたって聞いて気になったんだ……。衣奈は、なんでその由井って人のことをそこまで探してんのかなって」
「探してるってわけではないんだけど……」
「で、土曜日は由井って人に会えたの?」
「うーん、と……。わたしが知りたいのは、由井くんがどんな人かってことなの」
由井くんは今ここにいて、わたしが知りたいのは彼の正体。
だけど、わたしの話を聞いたアキちゃんは、怪訝そうに首を傾げた。
「ん? なんか、よくわかんないんだけど。衣奈はすでに、その由井って人と知り合いってこと?」
「うーん、まあ……」
「なにその反応? 知り合いだけど、親しくはないって感じなの?」
親しく……。もう一週間ほど毎日一緒にいるから、親しいって言えば親しいのかな。
由井くんのことをちらっとさりげなく見る。
わたしの視線に気付いているのか、いないのか。由井くんは前を向いたまま無反応だ。



