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その日の昼休み。
お弁当を食べたあと、彼氏に会いに行くという瑞穂といっしょに教室を出た。
「衣奈、どこか行くの?」
「飲み物買いに行く」
「そっか。じゃあ、あとでね」
瑞穂の彼氏は二年生だから、教室はひとつ上の階。自動販売機があるのはひとつ下の階。
階段のところで瑞穂と別れると、後ろからついてきていた由井くんが、ふわっとわたしの横にきた。
ちらっと横目で見ると、由井くんがにこっと笑いかけてくる。
朝はものすごく無表情だったけど、今隣にいる由井くんの笑顔はいつもどおりだ。
なにかわたしに言えないことでも思い出したのかな、と心配してたけど……。わたしの思い過ごしだったのかもしれない。
人通りがあるから学校ではあまり由井くんに話しかけられないけど、飲み物を買いに行ったあと、中庭にでも行こうかな。
そこならあんまり人が来ないから、由井くんと話していても目立たない。
駆け足で階段を降りると、由井くんが同じスピードでついてくる。
学食のそばの自動販売機でホットミルクティーを買うと、あつあつの缶を伸ばしたセーターの袖の上から両手でつつむ。
「中庭行こう」
こそっと声をかけると、由井くんがパッと目を輝かせた。



