気になってジッと見つめると、わたしの心配のまなざしに気づいた由井くんが、ハッとしたように表情を緩めた。
「衣奈ちゃん?」
わたしにだけ聞こえる声で名前を呼んだ由井くんの唇の端が弓状に引き上がる。
わずかに目を細めて微笑む由井くんが、教室に差し込む朝の太陽の光に透けて綺麗で。ドキリとした。
さっきまで、わたしはアキちゃんのことを考えていたはずなのに。
ちょっと笑いかけられたくらいで由井くんに心を揺さぶられるなんて、気が多すぎ……。
自分の優柔不断さに反省しつつ、由井くんから顔をそらす。
わたしはべつに、由井くんのことはなんとも思ってない。
突然、視えるようになって。なにも覚えてないけど、わたしのことが好きだ、って言われて。つきまとわれて。そのせいでクレイには牙を向けられてて、困ってる。
なんとかして、わたしから離れてもらわなきゃって思ってる。
だけど、ときどき由井くんにドキリさせられてしまうのは、彼の見せる表情が、瞬間的にとても綺麗だから。
ただ、それだけだ。



