「なんで、ちょっとつまらなそうなの」
「だって、衣奈が全然好きな人とかカレシ作らないのって、密かに幼なじみの矢本くんに恋してるからなのかな〜ってちょっと思ってたから」
「いやいや、ないって」
笑って顔の前で手を振りながら、口の端がひきつりそうなのがちゃんと誤魔化せているかな……、と思う。
話してなかったのに、瑞穂にはうっすらとバレてたんだな。わたしの気持ち……。
アキちゃんは鈍いから大丈夫だと思うけど、気付かれないように気をつけなきゃ。
瑞穂の前でひきつり笑いをしていると、横顔に視線を感じる。
見ると、由井くんはまだ無表情でわたしのことを見つめていて。やっぱり、少し怖かった。
どうしたんだろう。
考えてみれば、土曜日にふたりで青南学院に行って帰ってきたあとから、由井くんは少し様子がおかしい。
青南学院に行って、帰りにスーパーに寄ったときまでは「デートだ」って喜びながらわたしについてきていたのに。
家に帰ってからは、今みたいに無表情でわたしのことを見ている瞬間が多くなって。クレイから、今まで以上に敵意の牙を向けられていた。
もしかして……。青南学院の前に行ったことで、なにか思い出したことでもあったのかな。
学校の前ではなにも思い出している気配はなかったけど、時差でなにか思い出すことがあったのかもしれない。
それをわたしに言えなくて、困ってる……、とか?
だとしたら、少し心配。



