その後兄貴の母親が病気で亡くなって。

親父が熱を上げたのは、俺のお袋だった。

それでも恋多き親父は俺が生まれた後も色んな女と遊び歩いているらしく。

そんな男の世話にはならないと、俺を連れて出たお袋は今も親父と連絡を取っていない。


「別に用事なんてないけど、とりあえず…」


兄貴は普段このだだっ広い家に一人で、たまに帰ってくる親父と一緒に住んでいる。

本来なら俺が来ていい場所じゃないとは思うけど、水商売をしているお袋は夜が不在で。

家に帰ってもモヤモヤする時は、こうやって兄貴のところにやって来る。