23時の王子様とのホワイトデー

「ね、颯。赤ちゃん産まれても、私をお姫様として見てくれる?」 

「当たり前だろうが。俺にとってのお姫様は、一生美弥だけだから。一生俺だけ見て、一生俺にだけ抱かれとけ」

自信満々の顔で颯が、口角を上げる。

「うんっ」

私は、颯の掌をギュッと握り返した。

「じゃあ、会計して、指輪見に行こうぜ」

私は、キョトンとして、自分の左手の薬指を眺めた。そこには、颯がプロポーズしてくれた時にプレゼントしてくれた、大粒のダイヤモンドが光っている。

「ばぁか。それは、婚約指輪。俺が言ってんのは」

私に言葉の続きを促すように颯が、言葉を切った。

「えと……その」

「早く言え、合ってるから」

「……結婚……指輪?」 

「正解」

颯が、大きな掌で私の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「行くぞ」

颯が、いつものように私の手を引く。大きくて、あったかくて、どんな事からも守ってくれる優しい掌。

この『23時の王子様』の掌を私は、もう二度と離さない。