23時の王子様とのホワイトデー

「どしたの?颯、ぼんやりして?」

「え?なんでもねぇよっ」

(何だろ、この感じ。まさかね……颯が、赤ちゃんにヤキモチとか……妬くとかないよね……)

「なぁ、美弥」

颯が、(おもむろ)に、ずいっと私に顔を寄せた。

「わ、颯」

何度見ても、何度目があっても、私の心臓は、相変わらずドキンと、震えて、顔は、すぐ熱くなる。

「どした?俺に見惚れた?」

「ちがっ……」

私は、一瞬口元を覆ったが、続きの言葉を小さな声で呟いた。 

「……わないかも……」

否定しようとしたが、颯に聞かれると嘘が、つけない。

私はいつだって、『23時の王子様』に夢中だから。


「だろうな、顔真っ赤。マジ可愛い。あー……早く抱きてぇな」

颯は、満足気な顔をすると、一瞬、宙を見た。

「安定期まで、長く感じんな……ま、安定期入ったら、すぐベッドな」

「え!そ、そんなことして……大丈夫……かな」

颯が、切長の瞳をキュッと細める。