極道一条組次期組長候補現若頭。
長ったらしいこれが、俺の身分を示す言葉だ。
極道…いわゆるヤクザと呼ばれる、カタギの人間が知り得ない世界で生きている。



「若、お気持ちは分かりますがあまり苛立たないで下さい。」


「……チッ。止めろ、少し頭を冷やしてくる。」



車を停めさせ、そのまま何も言わずに降りる。

どこへ行くのか気にしていた視線には気づいていたが、何かを言うつもりはない。
俺の側近だ、それくらい察して分かるだろ。


ブラブラと、何も考えずに歩いていると住宅街に足を踏み入れていた。

いつどこで命が狙われるか分からない職業だが、住宅街でこの時間。
家に帰っている人間も多い、ここで騒ぎを起こすような事はないだろうと判断した俺はたまたま見つけた公園のベンチで一息つくことにした。