いつもより、きつめのメイクを施す。
着物が藤色だから浮かない程度に。


藤雅は、一条組の若頭で…立場のある人で。
わたしはそんな人の彼女だから。
舐められないように。
不安に思ってるのを、周りに悟られないように。



「…芽来。入るぞ。」


「うん。」



メイク道具を片付けていたら。
支度が終わった藤雅が入ってきた。

隣の部屋で準備をしていたらしく、わたしが終わるまで待っていてくれたみたい。



「……綺麗だ。」


「ほんと?…わ、びっくりした。」



袴姿の藤雅もかっこいいよ、って。
言おうと思ったのに、先に藤雅に抱き締められてしまった。


袴姿なんて、初めて見たから写真に収めたいくらい。
スーツも似合っててかっこいいけど、和装も似合うなんて知らなかった。

どんな姿を見ても、毎回惚れ直してる気がする。



「お着物、ありがとう。
藤雅が用意してくれたって、さっきの人達が教えてくれたよ。」


「芽来は何着ても似合うからな。
これにして正解だ。」


「ほんと?
藤雅がそう言ってくれるなら。」


「当たり前だ。
俺の女だからな。」


「…ん。」



藤雅とキスを交わして。
わたしのリップが、藤雅の唇に移ったのを見て思わず口元が緩んだ。