「絵馬書けました?」
俺がぼんやりと考え事をしていると、真結さんは車椅子から身を乗り出して俺の顔を覗き込んだ。
「あ、えっと…一応書けました」
「陽介さんはなんて書いたんですか?」
「いや、ちょっとそれは…」
「見せてくださいっ!」
真結さんは奪うように俺の絵馬をとった。
「『真結さんがまたサーフィン出来ますように』って…」
「あの、いや、それは、その…」
俺は自分の顔が赤くなっていくのが鏡を見ずとも分かった。
「嬉しいです。自分の絵馬に私のこと書いてくれるの」
彼女は俺の絵馬をぎゅっと握り締め、にっこりと微笑んだ。
「そ、そう言う真結さんは、絵馬になんて書いたんですか?」
「私のは別に見なくていいんですよ」
彼女は俺の絵馬を雑に返すと、自分の絵馬を掛けに行ってしまった。
「ちょ、ちょっとずるくないですかー?」
「いつか勝手に見てくださーい!!」
「ずるいですってー」
俺らの笑い声が静かな神社に響き渡る。心なしか神社も笑っているように見えた。