俺は彼女に案内されるまま、病院の裏にある小さな神社へと辿り着いた。その神社は、正月に近いというのに人気がなく、木枯らしが吹き荒れていた。
「この神社、私の病室から見えるんです。いつも見てるけど、誰かがこの神社に来ているのを見たことがなくて。でも、いつか来てみたいと思っていたんです」
彼女はしみじみとそう言った。神社の立て札には、『願ひ結びの神』と書かれている。この神社ではとにかく願い事をすればいいってことなのかな。
「絵馬、ご自由にどうぞって書いてありましたよ!」
真結さんはもう乗り慣れた車椅子を動かし、野放しにされていた絵馬を見つけてきたようだ。
「この神社、神主さんがいないみたいですね〜」
彼女がそう言うと、俺にはこの神社が忠犬ハチ公のように見えてきた。朽ちて一部が欠けた柱。枠組みしか残っていない障子。そんな様子を見ると、一吹きの風で全部飛ばされてしまいそうなほど、古い神社であることが分かる。神主さんはずっと前に居なくなってしまったのであろうか。お客さんも来なくなって、ずっと一人ぼっちで、それでもこの神社はここに立ち続けたのである。真結さんが見つけて訪れる今日この日まで。そう思うと、彼女とこの神社は運命の糸で結ばれているような気がした。