病室に入ると頭を抱えて座り込む叶汰と、目を泣き腫らした真結さんがいた。
「陽介さん…私…」
足をさすりながら涙をこぼす真結さんに、俺は何も言えなかった。
「真結は無理に話そうとしなくていい」
叶汰は真結さんを静かになだめた。俺はやっと状況が読み込めて、口を開けた。
「リハビリとかすれば…また歩けるようになるんじゃ…」
「それは難しい。摂取するミネラル分が減って神経伝達が上手く行かなくなった。筋力も落ちてきているんだ。病状が悪化した以上、生きるためには避けて通れない運命なんだ」
俺はすぐに叩きつけられた現実にまた口ごもった。
「運命…か…」
ベッドの横に置かれた車椅子が俺にはとても醜く見えた。

家に帰ってから俺は何度もメールを開いた。守るって決めたはずなのに、俺は何も言葉をかけてあげられなかった。手が震え、足がすくみ、せっかく買ったグミも渡さずに逃げるように帰ってきてしまった。
何か励ましのメールを送ろうか。だけど、「大丈夫」とか「いつか治る」だなんて根拠の無い言葉を投げかけたところで、逆に彼女を傷つけてしまうことぐらいわかっていた。俺はどうしても、自分の無力さにただ落ち込むことしか出来なかった。