後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

「嘘……嘘よ」

「残念ながら嘘ではないわ。この侍女ったら可哀想ね。普段、忠実に主のために仕えているというのに……主が失態を犯したために殺されてしまうなんてねえ？」

震えて縮こまっている玲雲に喩良妃がわざとらしく萎(しお)れた様子で囁(ささや)く。

「喩良妃さまが殺したくせに……そんなことをおっしゃるのですね……」

精一杯の状態で言い返す玲雲に喩良妃は嘲笑した。

「まったく馬鹿な娘(こ)ね。私が殺したんじゃなくて、お前がその侍女を殺したのよ？主が身勝手な行動をすれば侍女が咎(とが)めを受ける。それぐらい分かるわよね？お前が侍女を殺したの」

「ち、違うわ――」

「いいえ、殺した！お前が！殺したの！！」

喩良妃に凄い剣幕で怒鳴られた玲雲は床にくずおれた。

「身をわきまえなければ、今度はお前の首を徐静妃の元へ送るわよ」

玲雲の様子に満足した喩良妃は捨て台詞を残して去っていった。

「姐姐(おねえさま)の言う通りだったわ――」





――五日後――

張王妃の茶会に招かれた喩良妃と楊静妃は郭御華の話をする。

「あの女のせいで殺し損ねたわ！徐静妃よりも郭御華を先に消さないと！」

「喩良妃、物騒なことを言わないでちょうだい」

憤然とした様子の喩良妃に、王妃がゆるりとたしなめる。

「王妃さま！徐静妃が憎くないのですか！？」

「落ち着いて、喩良妃。私たちが慈悲の心を持って接すれば徐静妃も郭御華とも分かち合えるわ。ね？」

「やる気がないのであれば、もう良いです！私がやるわ」

「なっ……！喩良妃！！」

喩良妃は王妃の声を無視して帰っていく。

「王妃さま、喩良妃さまは王妃さまのためを思うがゆえの言動ですわ。どうかお怒りのなきよう」

「ふんっ、どうかしらね。興ざめしたから解散よ。楊静妃も帰りなさい」

憤った様子で立ち去っていく王妃を見ながら、楊静妃は嘲笑する。