後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

「だからこそ、あなたに言っているのよ!私のせいで妹を巻き込みたくないの。だから、これから私と関わるのはおよしなさい。分かったわね?」

「わ、分からないわ……!」

「玲雲!!」

玲雲は泣きそうな顔をしながら走り去っていき、美凰は深くため息をついた。





「お嬢様、お待ちください!」

美凰から関わるなと言われた玲雲は侍女の呼ぶ声を無視し、泣きながら正嘉殿へ戻る。

部屋に入ろうとした時、背後から何者かに押さえつけられる。

手つきからして宦官たちのようだ。

「恵侍医を連れだしたのは……お前?」

声がしたので椅子の方に顔を向けると、喩良妃が膝にのせている何か(・・)()でながら見下ろしていた。

「ゆ、喩良妃さま……」

「よくも台無しにしてくれたわね。もう少しで阿蘭を殺せそうだったのに……どうやらお前を見くびっていたようね?」

「なぜ……?なぜ殺そうとするの?」

「なぜ?邪魔だからに決まっているでしょ?」

平然とした様子で言う喩良妃に対して、玲雲は声を荒げる。

「そんな理由でやっていいとでも本当に思っているの!?正気の沙汰じゃないわよ!」

「口の利き方には気を付けることね。それより……これをお前にやるわ」

喩良妃は侍女に命じて、膝にのせていたものを玲雲へ渡させる。

(はこ)を受け取った玲雲はずっしりとした重さに困惑する。

開けてごらんなさいと言われ、恐る恐る開けて中身を見ると、玲雲は悲鳴を上げてそれを放り投げる。それは、若い女の生首(・・)であった。

「どうして怖がっているの?お前が大切にしていた女官よ?ほら、よく顔を見なさい」

確かに顔には見覚えがある。実家にいるときからの侍女だった二人のうちの一人だ。