後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

美凰は阿蘭の世話を女官たちに任せて外に出る。

惢真が侍医院から戻ってきたので、急いで駆け寄る。

「惢真、侍医は?もうすぐ来るの?」

侍医の姿が無いので尋ねると、惢真は勢いよく跪いて謝る。

「申し訳ございません、美凰さま……。侍医は皆、出はらってしまっていたのです……!」

「侍医は四人もいるのよ?だれもいなかったの……?」

「最初は二人いたのです。ですが、喩良妃さまの侍女が二人とも連れて行ってしまったのです。一人だけで構わないので蘭華殿へ寄こしてほしいと言っても、たかが侍女ごときに厚かましいと……」

「そんな……」

姐姐(おねえさま)、侍医を連れて来たわ」

門の方から声がしたので振り返ると、郭御華が(けい)侍医を連れて来ていた。

「徐静妃さまに拝謁いたします」

「礼はよいですから、阿蘭を診てください。惢真、案内して差し上げて」

「かしこまりました。恵侍医、こちらです」

恵侍医が行った後に、玲雲の方へ向き直る。

「ありがとう。助かったわ」

「姐姐のお役に立てたのなら良かったです。それでは――」

「お待ち!」

「……何か御用がありますか?」

「玲雲。もしかして、喩良妃の許可なく恵侍医を連れてきたんじゃないでしょうね?」

「大丈夫よ。もちろん、許可はもらっているわ」

心配ないわ、と言って微笑む玲雲に美凰は首を振る。

「嘘おっしゃい。喩良妃がそんなこと許すはずないわ。ただでさえ、喩良妃に目を付けられているのにどうするつもりなの?」

「姐姐が困ってたら助けるのは当り前よ。私たち、姉妹同然でしょう?」