後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

喩良妃は正嘉殿には戻らず、楊静妃が住まう安誘殿へと向かう。

「喩良妃さまにご挨拶いたします」

安誘殿の門前では、楊静妃と呉御華が跪いて拝礼していた。

「楽になさい、二人とも。楊静妃、病だと言っていたけれど、具合はどうなの?」

「まだ本調子ではありませんの……それより、その者は一体……?」

楊静妃は咳をしながら、喩良妃の侍女たちに引きずられている者を怪訝そうに見る。

「女狐の腹心よ。あなたの病を治すために連れてきたのよ?感謝してちょうだいね?」

「阿蘭……?」

「ええ、そうよ」

喩良妃は宦官たちに椅子を持ってくるように命じる。

「楊静妃、女狐の影(・・・・)はまた部屋に籠っているのよ?不気味で気持ち悪いわ」

椅子に腰掛けるよう促しながら、郭御華の様子について楊静妃に言う。

「あの影のことでしたら、ほっとけば良いのでは?地味ですし、殿下に一度も夜伽を命じられたことがありませんのよ?これからも寵愛されることは無いでしょう」

「あなたの言う通りね。あの地味女といると陰気なせいで、こっちまで気が滅入(めい)りそうになるのよ。最近はずっと跪かせていたけれど、しばらくは放っておくわ。それはそうと、あなたの病を治さないとね」

喩良妃が合図したのと同時に、(むち)を持った女官たちが地面に倒れている阿蘭を取り囲む。

「やれ!」

喩良妃が命じると、女官たちは阿蘭を勢いよく鞭で叩きつける。

「喩良妃さま……お許しを……。どうか……どうか……お許しを」

阿蘭の顔や体は皮膚が裂け、女官たちも見ていられないありさまである。

「楊静妃、どうかしら?面白い見世物(みせもの)だと思わない?」

「ええ……とても素晴らしい見世物ですわ。病も早く治る事でしょう。呉御華はいかが?」