後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

「美凰さま~?郭御華さまがおいでになられましたよ~」

利欲が袖をひらひらと振って、煙管(きせる)をくわえながら、美凰と玉英がいる部屋に入ってくる。

「ちょっと利欲!煙管をくわえたまま入ってこないでと何度も言っているでしょ!王女さまも居られるのに危ないでじゃない!」

「はいはい、阿蘭殿。それでは失礼しますよ」

「利欲!!待ちなさいっ!!」

逃げた利欲を追いかけに行った阿蘭に呆れながら、惢真に玲雲を通すように命じる。

「姐姐にご挨拶を」

「礼はよいから座りなさい。話があるのでしょう?」

「は、はい。あの、母上の形見が返ってくるように殿下に言ってくれたのですよね……?」

「そうよ。戻ってきたなら良かったわ」

玲雲が美凰の助けだと確信したのには、理由が二つある。
一つは、扇子をいくつも持ち歩くのは令嬢としての(たしな)みなので、二つもいらないだろうと殿下が言うのはおかしいということ。
もう一つは、喩良妃に渡されていた扇子が、叔母である郭寧妃が美凰の叔母の徐昭儀に贈った物であったこと。
これらから、美凰が徐昭儀から譲り受けた扇子を殿下に渡し、喩良妃が自ら玲雲に返すように仕組んだと確信したのだ。

「まあ、玲雲ったら。どうして泣くのよ?」

「わ、私っ!姐姐に見捨てられたんじゃないかって思ってたの……!それが申し訳なくて……姐姐は私を助けてくれたのに、ごめんなさい……!」 

「私もあなたを巻き込まないためとはいえ、きつく言い過ぎたわ。ごめんなさいね」

お互いに謝り合っていると、殿下がやってきた。
急いで万福礼をするために立とうとすると、礼はよいと制される。