「美凰さま!殿下から文が届いてますよ!」

蘭華殿に帰ってくるなり、利欲がとても大事そうにうやうやしく文を渡してきた。

「ありがとう。下がって良いわよ」

「そんなこと言わず、俺にも文の中身を見せてくださいよ~」

にやにやしながら言ってくる利欲。

「どうせ大したことは書いてないわよ。えっと――」

「なになに~?母妃のことを聞いたよ。本当にすまない……。火傷は大丈夫か?夜、そなたのもとへ行く。ですって!」

「利欲、色々と飛ばし過ぎよ。それじゃ、軽薄な文章になっちゃうわよ」

「まあ、大体合ってるから良いじゃないですか。そんなことより、殿下が今夜も訪れてこられるだなんて、ご寵愛が深い(あかし)ですね~」

上機嫌の利欲は肩たたきに足の手入れをしてくれる。初対面のときと全然変わっており、むしろ変わり身の速さに感心してしまっている。

「美凰さま、顔が赤くなっちゃってますけど、どうしたんで――ははあ~、なるほど~。殿下とのあつ~い夜を想像しちゃったんですね~」

「なっ、ち、違うわっ!」

にやにやしながら顔をのぞき込んでくる利欲を押し離し、熱くなった顔を団扇でぱたぱたと扇ぐ。

(盈容さまのお話を思い出すなというほうが、無理があるわ……!)


幸せな新婚に満足していた美凰と秀快は、陰謀が渦巻きだしているということにまだ知らないのである。