「さっきは母妃がごめんなさいね。あなたのこと嫌ってるみたいだから……」

申し訳なさそうに謝る盈容公主に慌てる。

「どうか顔を上げてください。嫌われていることは分かっていますので、気にしていませんわ」

「ありがとう。徐静妃は優しいのね。殉葬されそうな時もあなたは助けてくれたわね。本当に感謝しているわ」

「そんな恐れ多いですわ。当然のことをしたまでですから」

美凰のあまりにも恐れ多いという態度に、盈容公主が面白そうに笑う。

「これもなにかの縁だわ。これから仲良くしましょうね。ついでに、盈容と呼んでくれないかしら?もちろん、公主をつけるのは無しよ」

「それこそ、恐れ多すぎますね。ふふっ、盈容さま……とお呼びさせていただきますわ。私のことも美凰と呼んでくださいませ」

「だめよ!兄上の想い人で私よりも年上なのだから……美凰姉さまと呼ぶわ!」

なぜ秀快の想い人ということを知っているのだろうか。

「なぜ知っているのかって顔をしているわね。実はね……」

こっそりと耳打ちされ、赤面しそうになるのをなんとか抑える。

(酒に酔い過ぎて、盈容さまに惚気話をするなんて……!恥ずかしすぎるっ……!)

「兄上の惚気はそれはそれは凄かったのよ!美凰姉さまが寝ているときに――」

「も、もう良いです!それ以上は恥ずかしすぎますっ!」

「もうお腹いっぱいですか?」

「違いますっ!盈容さまったら、からかわないでくださいよ……」

「ごめんなさい、つい面白くてね…………あっ!そういえば、指は大丈夫?火傷によく効く薬をあげるわね」

「ありがとうございます。使わせてもらいますね」