後宮鳳凰伝 愛が行きつくその先に

美凰が言うより早く、喩良妃が口を開く。

「静妃の分際(ぶんざい)で王妃さまから下賜されるものを気に入らないだなんて、殿下と王妃さまを侮辱しているつもりなの?」

「西湖龍井の茶葉なら、美凰さまも殿下から下賜されております!」

阿蘭が黙っていられないというように声を上げる。

「何ですって!?」

「阿蘭、もう良いから……」

「昨夜の夜伽で殿下は美凰さまのために、明前の時期に採れた茶葉を下賜なさったんです!雨前のものとは比べ物になりませんわ!」

阿蘭が誇らしげに言うと、喩良妃が怒りで震える。

「私ですらもらったことがないのに……!」

「王妃さま、喩良妃さま、侍女の無礼をどうかお許しください。王府に来たばかりで勝手がわかっていないのです」

阿蘭を後ろに下げ、美凰は跪いて謝る。

「許すわけないでしょ!」

「立ってちょうだい、徐静妃。今日は初めての顔合わせだから、侍女の非礼は許しましょう」

「王妃さま!」

「喩良妃、気に食わないのは分かるわ。侍女に無礼な態度を取られたものね……でも、徐静妃は昨日嫁いできたばかりなのよ?少しは慈悲をかけてあげて。ね?」

憤然としている喩良妃をなだめ、美凰の方へ向く。

「あなたにも茶葉を贈ろうと思っていたけれど、どうやら余計なお世話だったようね……」

「余計なお世話だなんて滅相もございませんわ!王妃さまから頂けるものでしたら、どんなものでも光栄のかぎりです。それに、明前と雨前では味の良さは違えど、上質な味わいには変わりありませんわ」

「徐静妃は本当にお茶に詳しいわね」

「それほどでもありませんわ」