私の説明を聞きながら、殿下はご自分の手の指をくねくねと動かしながら顔をしかめている。


「おい、ディア。そんな大層に説明するようなことか……? ただ手を繋ぐだけだろう?」


 必死で殿下に恋人つなぎの構造を説明する私に向かって、またガイゼル様がいらぬ口を挟んでくる。どうもガイゼル様は、私のレッスンがお気に召さないらしい。


「ガイゼル様、いちいち口出しは不要です。口じゃなくて手を出してください」
「手?」
「さあ、アーノルト殿下の恋人つなぎの練習台になって頂きますよ」
「はあっ?! お前がやれよ!」


 嫌がるガイゼル様の背中を押して、アーノルト殿下の横に並ばせる。二人は顔を見合わせて嫌そうな表情をしながら、それでもそっと手を繋いだ。


「おおっ、良い感じです。もう少し力を入れられますか?」
「ディア……恋人つなぎというのは、結構大変なものなのだな」


 殿下とガイゼル様は気まずそうに、お互いそっぽを向いている。恋人つなぎをしたならば、もう少し至近距離で見つめ合った方がよいのではないだろうか。


「殿下。ガイゼル様のことをリアナ様だと思って、見つめ合って頂けませんか?」
「わ、分かった……。ガイゼル、こっちを向け」


 二十歳前後のガッチリした細マッチョの青年二人が恋人のように手を繋ぎながら、視線を合わせる。しかも一方は、頭に兜付きだ。

 なかなかシュールな光景である。


「それでは殿下。繋いでいる手と反対の手で、少しガイゼル様の髪の毛を撫でてみてください」
「髪の毛を……」
「殿下、そこは眉毛です」
「あ、ああ……。すまない、ちょっと動揺してしまって」


 明らかに動揺して挙動不審な殿下の目の前で、ガイゼル様は完全に白目をむいて気絶寸前だった。