何だかんだで楽しく過ごすことができ、すっかり遅くなってしまう。
帰り際、三宅がトイレに行った隙に支払いをしてしまおうかと思ったら、しっかり伝票を持っていってしまっていた。
さすが抜かりない。
「ごめん、ちょっと電話してて長引いた」
「大丈夫です。じゃあ、帰りましょうか」
ふたりが焼き肉屋を出たのは終電近かった。
「わたしタクシーだけど、どうやって帰るの?」
三宅が財布を仕舞いながら聞いた。
「普通に電車で帰ります。まだ間に合いますし」
七生のマンションは都心にあり、会社からも電車で二駅ととても近い。
ふたりの家って感じはまだなくて、さすがお金持ちだな、なんて他人事に感心をする。
快速に乗ってやっと二十分という、文のアパートとは大違いだ。
「迎えに来て貰いなさいよ。足痛いんでしょ?」
「でも、悪いです」
「こういうときは甘えればいいの。まったく、男心がわからないんだから」
「三宅さんだって男の人と付き合ったことないくせに」
すっかり三宅に懐いて甘え癖がついた文は、頬を膨らませた。
先輩風を吹かしているが、今日の互いの暴露で、彼女も経験がないことが発覚している。
なんでも出来て、容姿も綺麗で人徳もあるのに、世の中というのは不思議だ。
なんなら、一瞬で終わったつき合いをカウント出来るのならば、文の方が経験値では先輩となる。
「経験がなくてもそれくらいはわかるの!」
三宅はヒールを踏み鳴らして駅へと歩き出した。



