ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

「わ、汚いでしょ。ちょっと、ふきん持って」

「っす、ずみまぜ……」

「なあに? そんなに焦ること?」

焦るというかなんというか。いったい全体どこまで知っての質問なのだろう。
悩んだ末に、この人なら口が堅いと思い聞いてしまう。

文はジョッキに半分残っていたウーロン茶を一気飲みすると、テーブルに勢いよく置いた。

「っあ、あの……どこまでご存じなんですか?」

「こっちが聞いてるんだけど」

(……う……)

もったいぶるなという圧力に観念する。

「い、いや、あの、こん、やく……しゃ……?」

「婚約者?!」

三宅の声に、隣の席のサラリーマンが振り向く。

「しーしー」

会社でもないのに、慌てて三宅の口を塞ぐ。

「駄目です。わたしもよくわからないんです。内緒にしてください」

「どういうこと?」

「えっと、間宮さんと付き合ってたらしいんですけど、記憶がなくて。その、階段から落ちたとき、頭を打っていて……彼のことだけ思い出せないんです」

毎日毎日、何度考えても駄目なのだ。
考えすぎて頭痛がしてくるほど。

自然に思い出すから、思い詰めては駄目だと言われてはいるが、そんなわけにもいかない。

「うそでしょ。記憶障害ってこと? でも、仕事も覚えてるし、わたしのことも分かるじゃない。間宮さんだけどうして?」

「間宮さんのことも覚えてます。ただ、付き合っていた記憶がないだけでーー……」

「ぶっ……」

こんどは三宅がお酒を含んだまま噎せた。