「っわ、わたしも」

「ん?」

「七生さんの、顔が……好きかな……」

きれいで、色っぽい。
何か返さなくちゃと思い告げると、七生は噴き出した。

「顔?!」

「へ? あ、はい」

元々好みの容姿ではある。

「ふうん。……まぁ、好みでもないよりはいいけどね。じゃあ、性格が駄目?」

「いや、そんな……駄目とかじゃなくて、なんていうか怖いだけっていうか……」

馬鹿正直に話してしまい、はっと口を閉じるが遅かった。

「あ、違うんです。ええと。なんていうんだっけ」

七生は笑い崩れて、文に寄りかかるとクツクツと体を震わせた。

「緊張する?」

「それです。凄い人だなって思うほど緊張するんです」

「それってさ、裏返せば好きってことじゃないの?」

「ーーーー」

言葉を失う。
好きだから緊張する?

「俺はずっと好きだったよ……文もきっとそうだ」

耳元に吹き込まれる声は呪文のようで、何度も聞かされていると次第にそんな気がしてくる。

「よくわかりません。でも、凄くドキドキします」

心臓がきゅっとして、わけわからなくなるのだ。
苦手だからではない?

「いいよ。今はそれでいい。でも覚悟をして。文が俺を好きと言うまで止めないから」

七生はまたキスを再開した。
耳朶から首、顎をたどり、リップ音を鳴らしながら愛を囁く。

戸惑い半分、心地よさ半分だった。