屁理屈だとわかるのに、言いくるめられてしまうのはなぜだろう。
確かに、今までのようにキャミソールにカップが付いただけの下着では、ボディラインが崩れる。
姿勢が悪く見えたり、だらしない雰囲気に繫がるから理解はできる。

メイクアップアーティストになれそうなほど化粧品も届き、文の部屋は物で溢れた。

素直に喜べない。
とんでもないヒット商品を生み出さないと、返還できないほどの借金を抱えた気分だった。

ある意味、しっかり働けよという副社長の脅迫なのではと思っている。
大量の洋服は、幼いころ憧れたお姫様のようで悪い気持ちはしないが、文が好きなのはやはり白衣であった。

(――――白衣が恋しい……)

あれほど鬱蒼として見えていた別館が、今ではオアシスのように輝いて見える。

研究室から秘書課に異動になり、仕事も人間関係も怒濤の情報量が押し寄せる毎日で、比喩ではなく文は本当に目を回していた。

先々のことまで考えてスケジュール管理をするというのが難しい。
アポイントは直前でコロコロ変わることが多く、一つ作業をして結果を待つという仕事を繰り返していた文にとって、その場で臨機応変にという仕事のやり方はとても疲れるものであった。