まぁ、イメチェンして他の男に注目されるなんて気に食わないが。

(文を最初に見つけたのは俺だ)

「仲をとりもってやろうか」

吾妻が先輩風を吹かす。

「今までシフトさえ教えてくれなかったのに?」

七生は胡散臭げに見た。
これまでに手に入れた情報は、勤務している場所と名前だけだ。

「そりゃあ、大事な従業員の情報など簡単にわたせないだろう。教えることはできないけど、必然的に知れる状況を作り出すのならできちゃうんだよね。俺って管理職だから」

吾妻は悪い顔で微笑んだ。



そんなわけで、文は秘書課に異動となり、副社長である吾妻の秘書となった。
もちろん鶴の一声というわけにはいかず、彼女の学歴、功績も吟味された。

勤務態度も悪くなく、入社後の研究にも貢献している。問題はない。

吾妻はもとより、秘書課がエリート意識が強くなりすぎていることに違和感があったらしい。

「誇りを持つことと、他の部署を見下すのは違うからね」

吾妻が語った言葉だ。

文はそのテコ入れに一役買わされたのだが、おかげで七生は、文と毎日のように顔を合わせられるようになった。