「――――文」
切ない囁きに体が疼く。
何これ。なんなのこれ。
彼氏いない歴五年。――といっても、五年前の彼は二度の食事だけで去って行った。
ようするに、ほぼ人生とイコールで恋愛経験はない。無論こんなキスは生まれて初めてだ。
なんなら普通のキスだって人生初。
たぶん。きっと。
今のわたしの記憶が正しいならば。
「んんんん!」
モゴモゴと抗議をすると、突然七生が「いってぇ!」と叫び背中を仰け反らせた。
「何するんだ!」
後方に向かって抗議をする。
どうらや宝城が攻撃してくれたらしい。
やっと離れた唇に、酸欠だった文は胸を撫で下ろした。
「こっちのセリフ。俺がいるんだけど」
宝城が呆れていた。
いつの間にか看護師は居なくなっている。
それだけが救いだった。
検査入院であと一泊しなくてはいけないのに、破廉恥な患者だと思われたら堪らない。
「急所を押しやがって。気を利かせて出て行ってくれればいいだろう。二日ぶりの文なんだ、もう少し堪能させてくれ」
七生は恥ずかしげもなくもう一度キスを迫った。
腰に回った手にぐっと引き寄せられる。
逞しい胸に飛び込み、あっと言う間に包まれた。
「文、逞が邪魔をしてごめんな、もう追い出すから存分に楽しもう」
「え? え?」
薄い唇が再び重なろうとしたとき。
「そういう問題じゃない。病室で盛るな!」
宝城はカルテを載せたバインダーで、パコンと七生を叩いた。



