「……は、え?!」

現場の状況、七生のセリフに頭が追いつかない。

わけがわからないが、一旦この場から退くチャンスであった。
起ち上がろうと膝を立てると、力が入らず崩れ落ちた。

「いっ……」

完全に痺れて感覚が無くなっていた。
両足ともいうことを聞かない。

「文!」

バランスを崩して転びそうになったとき、七生が抱き留めた。

「まったく、よく転ぶな」

「す、すみませ……」

なんとか立とうとするが、足首がくにゃくにゃと曲がり地面を踏めない。
触れるだけで激痛で、涙目になった。

(は、恥ずかしい……っ)

「仕方が無いな、帰るぞ」

七生はふっと笑うと、文を持ち上げる。

「きゃあ!」

おんぶでも童話のお姫様のような横抱きでもなく、肩に担いだ。
俵持ちだ。

「ちょ、ちょっと! やだ。七生さんっ」

文は子供のような扱いに七生の背中を叩いた。

「こら、暴れるな。危ないから」

それならば即刻おろして欲しい。
公開処刑だ。

「おじさん、そういうわけでして、僕たちを巻き込むのはご遠慮ください! 僕は琴音さんの幸せを願ってますよ。それには宝城の存在は不可欠です。今一度、何が一番大事なのかお考えいただけますか」

七生のは文を担いだまま宣言すると、颯爽と屋敷を出た。