ドS弁護士は甘い罠を張る。~病院で目覚めたら危険な男の婚約者になってました~

言い方は悪いかもしれないが、岩瀬家はまっとうなサラリーマンの家ではなかった。

錦鯉が泳ぐ池に、波のように敷き詰められた砂利。拝観料を取れそうな日本庭園だ。

SPのようなスーツの人たちが庭をうろうろとし、長く続く廊下を進み、襖を開けた先に鎮座していた琴音の父は、言うなれば極道のようだった。

テレビで見かける顔でなければ、ほんとうに政治家なのかと疑っていただろう。

そんな通常であれば関わることのないような家の座敷で、文はなぜか正座をしていた。
隣に七生、その隣に琴音と宝城が並ぶ。

趣旨としては、宝城と琴音の結婚を許して欲しいという内容だ。
その説得役に七生が抜擢されており、今日はその約束だったらしい。

そんな事情も知らずに追いかけてきてしまった文は、同席する羽目となった。

視線だけで人を殺せそうな眼力の岩瀬を前にして、七生はドラマでよくみる法廷の弁護士さながらの説得を試みていた。

「琴音さんは親しくさせてもらってますが、妹のような感情です。僕は心に決めている女性がおりまして、琴音さんと結婚するわけにはいきません」

文が同席させられたのは七生の作戦でもある。

「家族のような感情であれば、結婚しても家族だ。そう変わらんだろう。七生君に婿養子に来て貰い、わたしの片腕として共に国を良くして貰いたいんだ。君となら良い政治ができる」

岩瀬は何度話しても、七生が欲しいの一点張りだった。