『前のコンサートから間が空いてない分、さほど練習しなくても動けるだろう。それはいいのだけど…』

「……いつでも出られるよう準備しときます」



俺の言葉に、マネージャーは一拍おいた後「頼んだよ」と。それだけ言って電話を切った。


俺はスマホを机に置いて、そして…小さく息を吐く。



「今日は水曜。日曜まで四日間…。この状態の萌々を一人にさせたくねぇってのに…クソ」



マネージャーは「さほど練習はいらない」と言った。しかしメンバーはそうはいかない。


絶対に「前よりもいいコンサートを」と磨きをかけるに決まってる。つまり練習は日中夜に及ぶということ。


そうなると…萌々は、またこの家で一人になる。俺が練習でいない間、ずっと…。



「ほんと、ままならねぇなぁ…」



もう一度「はぁ」とため息をついた俺を。


壁という壁に貼り付けた鏡たちが、静かに見つめていた。




*皇羽 end *