「おい、ちょっとどうした。本当にどっか調子悪いのか?」

「……」



一言も喋らず表情も崩さない私を見て、いよいよ皇羽さんは焦ったらしい。私の傍に寄り、大きな手を頭の上に置いた。ポン、と。いつものように優しく。



「(だけど、全然…嬉しくない…)」



いつもの皇羽さん、なのに…頭の中でレオがちらつく。テレビで見たアイドルが、頭から離れない。目の前の皇羽さんを…レオだと思ってしまう。



「皇羽さん…」

「お、なんだよ。喋れんのか。食欲ないなら何か買って、」



私がやっと喋った事が嬉しかったのか、皇羽さんは笑みを浮かべる。だけど、次の言葉で凍り付いた。



「あなたはやっぱり…レオだったんですね」

「…………は?」



いきなりの発言にポカン顔だった皇羽さんだけど、持ち前の頭の回転の速さで「なるほどな…」と頷く。


どうやら私が言った言葉の意味を、理解したらしかった。