『では、 Ign:s の皆さんに歌ってもらいましょう!』
司会者に案内されて席を立つ。その時。
レオの右手に、チラリと見えた何か。
それは、何か――
――よし。大人しい今のうちに、皇羽さんの手首の湿布を貼りなおそう。ついでに何かマークを描いとこうかな。ちょうちょの仕返しに!
その右手首に、お店で買って来た湿布を貼ったのは、私。
仕返しに何かマークを描こうと思って、だけど猫しか描けない事に気づいて…不細工な猫を描いたのも私。
そして――
信じられない事に、その不細工な猫と、画面越しに目が合った。
レオが踊る度に、袖の隙間からチラチラ私を覗いている。間違いない、あの湿布を貼ったレオは、絶対に――
「…は、はは………皇羽、さん……?」
乾いた笑い、行き場をなくして泳ぐ目。そして、どんぶりの中でのびきったラーメン。
画面の中の「彼」は、時折感じる手首の痛みをものともしないで、平然と歌って踊っている。
そして時折カメラ目線で私を見ては、極上の笑みでほほ笑んでいた。