「アイツへのお返しは、ココだけじゃ足んねーよなぁ?」



ココ――と言って、皇羽さんが指でツツツと触ったのは、私の首。二つのキスマークがついてるなんて知らない私は爆睡で、何をされても起きそうにない。



皇羽さんは「好都合」と言って、私のおでこにキスを落とした後、自室から紙とペンを持ってきた。そして手首を痛めた右手に代わり、左手でペンを走らせる。


たまに、時々。
私の顔をちらりと見ながら――



「むにゃ…皇羽さん…」

「! 萌々?」



「それは私のパスタ、です…返して…」

「…ぷ。夢の中でもパスタ食ってんのかよ」



クツクツと笑いを押し殺したように、静かに笑みを浮かべる皇羽さん。そして私の顔を見て、一言。



「やるよ全部、お前にな。だから何でも、ねだってみろ」



優しい顔で呟いた皇羽さんに、私が回し蹴りをしたのは…数秒後。


翌朝、私は自身の寝相の悪さを何十回も皇羽さんから聞かされる羽目になるのだった。