麻衣と真樹子、運命の姦通/その1
剣崎



麻衣の持ってきた計画書に目を通した

その冒頭には、オペレーション名「ダーティー・ビューティー①」とある

フン、人を食った作戦名だわ(苦笑)

それにしても、その中身には正直、驚いた

何と大胆で、突拍子のないシナリオなんだ…

それと、恐ろしいくらいの非情さも伺えるが、これは自分に対する挑戦だろう

それだけじゃない

かなり先を見据えた、”計算”も見え隠れするしな

アイツが相馬会長とサシで会えば、一皮剥けるぐらいは予想していたが、実際は”化けた”ようだ

いや、”大化け”になるかもだ


...



おそらく、今までの迷いが立ち消えたんだろう

ひょっとすると、会長から”肝”となるようなもんも、掴みとったのかもしれない

もともと、あの二人には、”感覚”が通じるところがあったと思うしな

組の連中は、気性や眼光が似てるとかって事ばかりだが、そんなもんじゃないだろう

もっと深い、通じる何かがあるような気がするな

それに、年齢差を超えたシンパシーのようなものも…



...



麻衣がこの計画書の承認をオレに取り付ける口上も、今までとは明らかに違っていたしな

ヤツはオレにこう言った

「相馬会長との昼食会は、剣崎さんが取り進めたものですから、その後の私がこのくらいの計画持ってくるのは、期待してたと思うんで。改めて承認いただく必要もないと思ったんですけど、一応、形式はとってください」

あのヤロウ、承認を得るというよりも、有無を言わさずの気迫でニヤッとしてやがった

まあ、ここは好きにやらせてみよう

この計画書のシナリオ通りに事が運べば、一気に麻衣は”当面”の目的を果たせる

要は、今ある都県境のガキどもの勢力図が、ひっくり返る訳だ

一応、会長にもあらかたは話しておくか…

警察沙汰まで及ぶ事態もあり得るし、その際はなにかと手順があるからな

フフフ…

麻衣のヤツは即動いたようだ

今頃は砂垣の手駒から奪った女を”品定め”してるだろう