その2


そして今回のアップ作品冒頭では、その後のストーリー展開でも長く尾を引くことになる、北田久美を犯した後、恋仲へと至る西城アツシのそもそもと、南玉連合をヤクザのフィールドへ入れ込むとっかかりとなる”レッド・ドッグス”結成前夜が、どちらかと言うとややさりげなく描かれています。


しかしながら、作者の本作業では文字通り、この二つのプロローグテイストこそ、長編群像作品としての『ヒート・フルーツ』というキャンバスに鮮明に浮き出てくる基調旋律と感じずにはいられませんでした。


とにもかくにも、麻衣はその妖しくも力強い咆哮を以って、禁断のトリガーを無意識ながらも握ったのです。そして、彼女は”最後”までそれをぶっ放す気概を放棄しなかった…。


だからこそ、普通の女子高校生だった横田競子をああまで発熱させられ、彼女の持ち秘めていたピュアソウルを極限レベルで昇華させることができ得たのだと…。
そう思うのです。


...


かくして、本郷麻衣というデンジャラスマックスな磁気体には、様々な面々が吸い寄せられるかのように現れます。ネクストステージには、レッド・ドッグスという媒体によって、この時点で既に麻衣の憧憬する存在に至っていた高原亜咲が極めて重要な呼び水を起こして行く訳で…。


それは、麻衣へのアクションフローに、それこそ雪崩の如く多くの発熱少女たちを舞いこませるキーマンとして…。


本作に描かれる運命の”一発逆転劇”で、相馬豹一のバックアップを受けた麻衣は早速、総力疾走して行くことになるのですが、それは高原亜咲の”その後”があってこその、麻衣の決断だったのです。


他方、”怪物”紅丸有紀の結婚・引退・海外転居に伴う東京埼玉県境の再編機運の急流はもはや止めることができず、麻衣も水面下で建策を進め、岩本真樹子らとの更なる運命の出会いが彼女を待ち受けていたのです…。