その1


長編群像作品としての『ヒート・フルーツ』は、時系列順での構成でも、基本全3部というストーリー展開になります。登場人物は主だったところだけでも50人を超え、その相互相関関係が複雑に入り組み、ひとつのあるベクトルへと向かっていきます。


過去30年超…、各パーツエピソードを書き溜め、さまざま加筆・編集を繰り返すプロセスを踏んで、作者である私が最近になって改めて感じたことは、やはりこの作品本来の主人公は横田競子ではあったが、そのストーリー展開のリード役はあくまで本郷麻衣だったのねということでした。


要は、本郷麻衣という存在が居続かなかったら、『ヒート・フルーツ』の群像物語は”他のところ”へ行っちゃってたという結論がドンと降りてきたのです。これは、変な話、この長い物語の産みの親である私にとって、どこか衝撃でもありました。


その思いが、いまこそ再度、『ヒート・フルーツ』全編を本郷麻衣を基軸にしてなぞっての再考査をするべきだかなと…。そこに辿り着いたのです。それは本作を群像物語として捉えての最初から時系列に沿ったチェック作業に値しました。


この当該作業スタートと同時に、早くも”結論”が掴めました。長年ストックされたオリジナル稿を集大成したケータイ小説バージョンの長編作では、本郷麻衣の咆哮とその生きざまが作品を支えていたと…。


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今回アップした初回の本作品は、未公開エピソードに手を加え、まさに本郷麻衣、はじめの一歩たる”二つの出会い”を再編集したものです。言うまでもなく、これこそ北田久美と相馬豹一の二人と麻衣が出会った同時系列の於ける、長編作品『ヒート・フルーツ』真プロローグに該当する一節になります。


ざっくり捉えれば、もうこの冒頭で麻衣は『ヒート・フルーツ』全編の土台を敷いてしまっていたのです。乱暴に言っちゃうと、ヤクザ世界とのボーダーレスによるガラガラポンと、その究極の対峙…。”これの種”は早々にしっかりと撒いていたと…。


麻衣流に疑似れば、既存タイトルではありますが、”サイはぶん投げられた”…ということになるでしょう。