その2
麻衣



私はチンピラ3人にがっちりガードされ、何ヵ所かで降ろされた

いずれも、相和会の下部組織の事務所のようで、その都度私は正座させられて”待機”だ

それぞれの事務所では、電話のベルが絶え間なく鳴ってた

慌ただしく頻繁に連絡を取りあってるその様子からは、緊迫感がマックスに伝わってきたよ


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結局その日の深夜になって、相和会の本部にようやく”到着”だ

車から降ろされると、すぐに私は本部の奴らに引き渡された

チンピラ3人はというと…

本部で待ち構えていたスーツ姿の何人かに囲まれ、荒々しく”引っ立て”られてった

周りにいる連中、その光景を私にわざと見せているようだったけどね

私、知ったことかって気分だった

なにしろ、本部の庭先には大勢の連中が出てきてて…

それだけで、私が起こした”コト”の重大さはわかったわ

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その後、屋敷の奥にある広い和室に連行となった私は、また正座だ

室内には”見張り”が2人、立ってる

しばらくして、”ギャー”って悲鳴のような叫び声が聞こえてきたわ

複数の男の絶叫だったから、だいたいは想像が付くって

さっきのチンピラたち、”ケジメ”つけさせられてるんだろう

チンピラたちの悲鳴が収まると、ガサガサと音がして、人が出ていく様子だ

それも終わったところで、スーツをビシッと決めた長身の男がこの部屋に入ってきた…

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見張りは一礼してるし、一目見て幹部の偉い人ってわかる

その人、私の正面で半腰になってから言った

「今、会長が来る。直接話すそうだ」

それだけですぐ立ったが、その幹部らしき男、部屋を出る間際にもう一言加えた

「それから…、お前が傷つけた相手は会長の息子だ。承知しとけ」

そういう事か…

そう言われればチンピラ、”若”とかって言ってっけ

フン…、今さらそれがどうしたってことだ

檻に放られたウサギにも牙があるって、猛獣さんたちも知っただろう


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それからおよそ7,8分ってとこだった

正座してる足がしびれてきはじめた頃になって、和室の襖が勢いよく開いたんだ

来たわ、やっと

既に見張り二人は外に出ていて、これからはサシということらしい

はは…、なるようにしかなんねぇし

早いとこどうぞってとこだ、こっちはさ