十年前の約束

「あ、はい。そうです、お久しぶりです、おばさん。
 突然お伺いしてしまってすみません。それであの……真帆ちゃんに会えないかと思って来たのですが。真帆ちゃんは……?」

 しどろもどろになりつつも、彼女に真摯な瞳を向けると、彼女は嬉しそうに目尻を垂れた。

「そぉう。あの子に会いに来てくれたの。さぁさ、上がってちょうだい?」

「……あ、はい」

 それまで差していた日傘を畳んで鞄に仕舞う。お邪魔します、と呟き、玄関のたたきで靴を揃えた。

 真帆ちゃんも……まだここに住んでいるんだ、良かった。

 ほう、と胸を撫で下ろすものの、家の中に漂う湿っぽい空気で、何となく居心地の悪さを感じる。

「真帆〜、お友達の春香ちゃんが来てくれたわよぉ?」

 おばさんに続いて通されたのは和室だった。

 普段からピシャリと障子を閉め切っているのだろうか、日光も風も通さない畳の部屋からは若干のカビ臭さを感じた。

「ほら、春香ちゃん。あの子よ」

 和室だと思った瞬間から予想はしていたが、おばさんが手で差し示したのは仏壇だった。十歳の頃の真帆ちゃんが、写真立ての中であどけない笑みを浮かべている。

 その隣りに立てられた黒の位牌。

 ……そんな。亡くなっていたなんて。

 私は言葉をなくし、その場に膝を付いた。