猫と髭と冬の綿毛と


「 hello 」

「 ……hello 」

久しぶりの連絡で唐突な言語を聞き、茶化した様子に笑いながら同じように返した。

けれど、彼女は急に黙り込み、聞こえた息遣いが今にも泣き出しそうで、掛ける言葉に躊躇う。

「 I Miss you…… 」

その言葉に思わず目を伏せ、込み上げて来るものを必死に瞬き、何とか誤魔化す。

「 I don't know 」

すると、彼女が少し笑って息を吸い、次の言葉にするところを咄嗟に被せた。

「 I Love you……and……marry me? 」

ようやく言えた肝心なことは、おそらく、勢いよりも現地の環境が大きい気がする。

それでも向こうから聞こえる鼻を啜る音で、想いを遂げたように、少しずつ胸を撫で下ろした。

「それ、直接言って。またね、お髭さん」

和らいだ気持ちに浸る間もなく、彼女は早々に切り上げ、画面には懐かしい写真だけが残された。

まったく、何を考えてるんだか……、などと軽く鼻で扱い、纏めた写真を机の隅へ置き、ガラス瓶から飴を取り出す。

包み紙を剥いてる途中で誰かが呼ぶ声がした。

婦人や子ども達か、と耳を澄ませたが、下の階からは楽しげなテレビの音が聞こえてくる。

単なる空耳か、と再び鼻で扱い、飴を取り出した瞬間だった。